役員の任期
株式会社の役員には任期があることは、当然ですが旧会社法から現在に至るまで役員の任期の規定に変遷があります。
古い会社の場合は重任登記の懈怠-けたい(重任忘れ)の際にどの程度懈怠しているのかなどを調べる際の参考になります。
<監査役と取締役の任期の変遷>
施行日 |
監査役の任期の変遷 |
取締役の任期の変遷 |
---|---|---|
昭和26年7月1日 |
1年 |
2年(設立時は1年) |
昭和49年10月1日 |
2年 |
2年(設立時は1年) |
平成5年10月1日 |
3年(設立時は1年) |
2年(設立時は1年) |
平成14年5月1日 |
4年(設立時は1年) |
2年(設立時は1年) |
平成18年5月1日 |
原則4年(10年まで伸長可能) |
原則2年(1年から10年で伸縮可能) |
株式の譲渡制限がついた、いわゆる取締役会の非設置会社では、定款において最長10年に延ばすことができます。ただし、監査役の4年未満の任期は認められません。
☆監査役が設置されている会社で尚且つ設立時よりかなり年数が経過しているような会社の場合は、懈怠-けたい(重任忘れ)をしている恐れがありますので、御確認をお願いします。
<任期を決めるときの注意>
新会社法になってから、役員の任期を簡単に10年にすることができるようなりました。10年にすることによって重任登記を10年間しなくてもよいというメリットがありますので多くの会社が10年を採用しております。
役員の任期を10年にすると、重任登記までの間隔が長いので確かに便利ではあります。しかし、逆に考えると任期途中でその役員にを辞めてもらわなければならい訳ですが、「○○さん、辞任をしていただけませんか」と、なかなか言い出しにくいのが現実です。
しかし、会社の運営上何らかの問題があって辞めていただきたい場合でも、その役員が承諾しなかったら辞任出来ません。
すんなり辞任が決まればよいのですが、すんなりいかない場合は「解任」するという手段もありますが、解任の情報は履歴事項証明書(登記簿謄本)にも記載されますので、過去に何らかの問題があった会社と判断され信用を失う恐れがあります。(融資・新規大口取引などに悪影響)
また、解任された役員から訴訟を起こされたり、残りの任期分の役員報酬を請求されたりする場合もありますので、リスクがあります。
役員の任期を短く設定することは、重任登記をする煩雑さはありますが、これまで述べてきた任期途中での役員の退任のリスクを考えると、会社の経営上は無難であると言えるでしょう。
役員の重病・犯罪・会社に対する背任行為・海外移住・その他人間関係の悪化など会社にとって役員として好ましくない状況になるようなアクシデントは全くないとは言い切れませんので、役員の任期の設定には役員の人柄・年齢・人間関係、他の役員や株主の意見を尊重しながら慎重に設定することが重要です。